オンコリスバイオファーマ株式会社(英:Oncolys BioPharma Inc.)は、ウイルス学を技術基盤とした日本の岡山大学発の創薬バイオベンチャーである。

概要

創設は2004年5月18日で、創設者は、京都薬科大学修士卒で小野薬品工業そして日本たばこ産業に勤務した浦田泰生と、岡山大学教授の藤原俊義である。

2013年12月6日、東証マザーズに上場した。現在の代表取締役社長も浦田泰生。本社は東京都港区虎ノ門にある。

がんや重症感染症の患者の救済、「未来のがん治療にパワーを与えよう(Powering Future Oncotherapy)」、「がんを切らずに治す」を標榜している。

主な開発中(治験中含む)薬剤に「テロメライシン」を中心とする複数の治療薬がある。テロメライシン (OBP-301) は台湾のメディジェン(基亞生物科技股份有限公司)(Medigen Biotechnology Corp.)と共同で研究開発・製造している腫瘍溶解ウイルス療法で、現在最先端のラインは第II相試験実施中の段階。

また、販売中の検査薬に「見えないがんを可視化する」というコンセプトのウイルス検査薬テロメスキャンがある。

社内では創薬プラン開発を行い、一方製造、非臨床試験および臨床試験はアウトソーシングするファブレス経営を採用して経費と期間を短縮している。開発データに基づく、薬剤候補の開発・製造・販売権が当社の商品である。中外製薬、Transposon Therapeutics, Inc.等に導出が進んでいる(別項#開発・製造・販売権の導出)。

主なパイプライン(開発中薬剤)

 主力の「がんを切らずに治す」テロメライシンの技術をベースに、オリジナルな OBP-301 からがん殺傷力を高めた第二世代テロメライシン OBP-702 および感染力を高めた OBP-405へ、そして第三世代は静脈に注入して全身のがんの治療をいっぺんに可能とするスーパーテロメライシン OBP-170□ へと、次第に威力、影響力の強い商品になるよう、シリーズで企画・開発している。これらはフェーズ差をもちながらも、並行して進捗させている。

一方、これもテロメライシンをベースにして蛍光機能を付加した「見えないがんを可視化する」テロメスキャンは、OBP-401からOBP-1101に強化され、検査薬として販売され売上に寄与しはじめている。さらに、患部を可視化しながらの診断や治療への応用も研究されている。

医薬品

  • OBP-301(テロメライシン; Telomelysin)
    • 説明:5型のアデノウイルスのDNAの中に、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)のプロモーター(転写開始制御領域)を挿入したもの。
    • 適応症:固形がん(食道がん・肝細胞がんなど)
    • 開発段階:導出先の中外製薬による第II相試験が2019年12月12日より開始していて、2020年3月31日に第一被験者組入れ予定で進行中。そのほか各種適応症あるいは各種併用療法で複数の治験が進行中・準備中である。
  • OBP-702(Pfifteloxin)(別名:次世代テロメライシン、第2世代テロメライシン、武装化テロメライシン)
    • 説明:テロメライシン(OBP-301)を、がん細胞を自然死(アポトーシス)に招くp53遺伝子を組み込むことで強力にしたもの
    • 適応症:固形がん(膵臓がん・骨肉腫など)
    • 開発段階:製造が終わり、非臨床試験進行中
    • 特記事項:2017年からAMED事業に採択され補助金受領。P1開始努力目標は2022年(までに)。岡山大学からOBP-702の非臨床試験のうち、製造法並びに品質試験法の開発検討を受託したと発表。
  • OBP-801
    • 説明:ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(エピジェネティックがん治療薬)
    • 適応症:眼疾患分野で最高のソリューション候補。また、肺がん、腎臓がん、中皮腫、婦人科がん等幅広い固形がんの治療
    • 開発段階:米国(第I相試験)

 その他:OBP-405(Telomelysin-RGD)(別名:次世代テロメライシン、第2世代テロメライシン)、OBP-170□(スーパーテロメライシン)、OBP-601(センサブジン; Censavudine)、OBP-AI-004

検査薬

  • OBP-401(テロメスキャン; TelomeScan)
    • 説明:特許を取得したウイルスを使用して、上皮系と間葉系との両方の表現型の、生きている末梢血循環腫瘍細胞(CTC)を検出することのできる、がん診断プラットフォーム
    • 適応症:非小細胞肺がん、子宮頸がん、膵がんの各検査
  • OBP-1101(テロメスキャンF35; TelomeScan F35)(総称「テロメスキャン」にOBP-401と共に含めることもある)
    • 説明:35型のアデノウイルスのウイルスファイバーを導入することで感染性を高めた、改良型テロメスキャン

開発・製造・販売権の導出

OBP-301の開発・製造・販売権は、まず2016年11月30日、中国、香港およびマカオに関してハンルイ(江苏恒瑞医药股份有限公司)(略称:恒瑞)(Hengrui ; Jiangsu Hengrui Medicine Co., Ltd.)への導出(ライセンスアウト)とハンルイからの契約一時金受領(金額非開示)の契約を締結した。さらに2017年12月15日、ハンルイからの第一回マイルストーン(開発進展に応じた報酬)の受領(金額非開示)に成功と発表した。

2019年4月8日、中外製薬への日本国内の開発・製造・販売権導出と中外製薬からの契約一時金(5.5億円)受領に成功した。同日(一部地域を除く)全世界の開発・製造・販売権の独占的オプション権もオンコリスバイオファーマから中外製薬に付与した。中外製薬は本独占的オプション権を行使した場合、オンコリスに支払う総額は500億円以上で、それと別に販売ロイヤリティを支払うことが記載されている。中外製薬はロシュグループであり、本オプション権の行使が待望されている。

2019年12月13日には、現在進行中のOBP-301の臨床試験で事前設定基準を満たしマイルストーンを達成したとして、中外製薬から契約に基づき第1回マイルストーンとして5億円を受領することになったことが発表され、順調に進捗している。

先駆け審査指定の獲得

上市までのスピードアップとして、テロメライシン(OBP-301)は厚生労働省の先駆け審査指定制度 の対象品目への指定に応募し、2019年4月8日、指定を得た。

指定理由は募集要件を以下のとおり満たしたため:①正常細胞では増殖せず癌細胞を破壊する。画期性が高い。②従来の食道癌の放射線単独療法の治療効果は不十分。③本剤は国内での2つの臨床試験 (計17例) が実施され、高い有効性を示唆 (食道局所完全奏効率70.6%)。④本剤は国内外で臨床試験を実施中で、世界に先駆けて日本で承認申請予定」

先駆け審査指定対象品目に選ばれたので、医薬品の審査は通常12カ月目標のところ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行う事前評価の活用で6カ月目標に短縮される。

テロメライシンの日本国内導出に伴い、本指定を受けた申請者はオンコリスバイオファーマから中外製薬になった。

誤解されがちであるが、制度として先駆け審査指定が受けられても、第III相試験が不要になるわけではない。「場合によっては第III相試験の結果の承認申請後の提出を認める」となっている。これでも、通常は第III相試験が終わるまで承認申請できずに待つ期間が、オーバラップによって節約できることがある。

事業所

  • 本社
  • 神戸リサーチラボ(兵庫県神戸市中央区港島南町6-7-4 神戸健康産業開発センター(HI-DEC) 2階)
    • オフィス
    • 検査センター

子会社

  • Oncolys USA Inc.(本社:米国ニュージャージー州)(President: 樫原康成, VP: Talia Biran)

主要投資先

  • Unleash Immuno Oncolytics(アンリーシュ)…スーパーテロメライシンの共同開発先であり投資先
  • Precision Virologics, Inc.(プレシジョン)…アデノウイルスのプラットフォームを使ったジカウイルス等へのワクチンの研究開発の投資先

創立の経緯

社名の由来

  • 浦田社長によれば、当社は腫瘍溶解ウイルス療法を開発する会社なので、腫瘍(がん)を意味するラテン語の onco- と、溶かしてしまうことの lysisとから、「がんを殺す」とか「がんを溶かしてしまう」という意味でoncolysisという医学用語にしようとした。しかし、たいへん言いにくいので Oncolys(オンコリス) というちょっと可愛い名前にしてしまった、という。

受賞

  • 第5回日本バイオベンチャー大賞 文部科学大臣賞受賞(主催:フジサンケイビジネスアイ)(2007年9月)
  • Licensing Executives Society (アメリカ、カナダ)年次総会 産官学連携部門 平成23年度 Deals of Distinction Awards 受賞: OBP-601(Censavudine)ライセンス導出に対して(2011年11月)

次世代の治療のビジョン

 社長コラムに『がんを切らずに済ます』として記されている。

沿革

脚注

関連項目

  • 浦田泰生
  • 田中紀章
  • 藤原俊義
  • 岡山大学
  • テロメライシン

外部リンク

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  • PTS株価 オンコリスバイオファーマ - モーニングスター
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  • 会社四季報 オンコリスバイオファーマ - 東洋経済新報社
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  • 大量保有報告書データベース 4588 上場以来 - M&A Online

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